《昔タントン 今ヨコヨコ♪》
《アンメルツ ヨコヨコ♪》
というバージョンの事を指しているという訳ですが、まあ、最後のアイキャッチ部分は拔萃して使われていた様に思いますが、それ以前の前奏・本編(と言ってもそれらの合計は4小節に過ぎませんが)を知る人というのは昭和40年以降に生まれた人だと相当苦しいのではないかと思います(笑)。

後年、アイキャッチ部分となったのが《アンメルツ ヨコヨコ♪》と歌われる部分なのですが、《ヨコヨコ》の部分は原調から見てⅥ度調(※♮Ⅵ度)へと転じるのがなかなか洒落たコード進行である訳です。
何しろ、原調はハ長調(Key=C)である訳ですので、それがイ長調(Key=A)で終止するという訳です。この洒落た終止部までのコード進行のプロセスは次の様に、
Em -> F△7(13) -> G7 -> A
となっており、これは《正格アンダルシア進行》にて終止和音がモーダル・インターチェンジとなって同主調へ転じたが故の事なのであります。
アンダルシア進行については過去にもスパイロ・ジャイラの「Foxtrot」で語った事があるのでブログ検索をかけていただければ当該記事を引っ張って来れますが、茲にあらためて書いておきますと、アンダルシア進行というのは
《四度先を目標に、順次下行和音進行する》
というのが特徴なのであり、その《四度先》が次の様に2種類存在するという事になる物です。
①Ⅰ -> ・-> ・-> Ⅴ〔正格アンダルシア〕=属和音を四度先として目指す
②Ⅳ ->・->・-> Ⅰ〔変格アンダルシア〕=主和音を四度先として目指す
いずれのタイプも《順次和音進行》重要な点でありますが、これらの四度の間は所謂西洋音楽形式によるディグリー表記あり、度数というのはあくまで音度の次数を示している物でしかなく、仮に次の様に、
Ⅰ -> ♮Ⅶ -> ♮Ⅵ -> Ⅴ
Ⅰ -> ♭Ⅶ -> ♭Ⅵ -> Ⅴ
Ⅰ -> ♭Ⅵ -> ♮Ⅵ -> Ⅴ
という風に異なっていようとも、音度の次数としては「Ⅰ -> Ⅶ -> Ⅵ -> Ⅴ」という風に変わりはないという事を示している所に注意をしていただきたいと思います。
尚、西洋音楽での音度をローマ数字で表す際、長調は大文字の「Ⅰ〜Ⅶ」と表し、同様に短調は小文字で「ⅰ〜ⅶ」を表しています。加えて、私のブログでローマ数字の大文字を用いながら本位記号「♮」や嬰・変の変化記号「♯・♭」でオルタレーションを用いている時は西洋音楽の表記ではなくジャズ/ポピュラー音楽表記の方に寄り添っている時であります。
また、アンダルシア進行は原調が短調(マイナー)および短旋法種である事が原則でもあるので、正統表記としてはローマ数字の小文字で表した方が良いのですが、茲から派生する事になるスパニッシュなどの派生種が何れモーダル・インターチェンジを採ったり順次上行までを採り入れる様になると長短混淆として、ローマ数字の大文字と小文字によるそれらの区別が希釈化して行くのです。
そうした点を考慮し、私はスパニッシュという派生種をも包摂して語っている為、ローマ数字による音度表記は大文字で表しているという点も併せて注意していただきたいと思います。これについては本記事だけではなく過去の記事でも一貫している事であります。
即ち次の様に、
正格アンダルシア・・・Ⅰ -> Ⅶ -> Ⅵ -> Ⅴ
変格アンダルシア・・・Ⅳ -> Ⅲ -> Ⅱ -> Ⅰ
という風になりますが、重要なのはそれらの順次進行に於て増二度音程は介さないというのが重要である訳です。増二度が生じていなければ、上掲ローマ数字の始まりと終わり以外の和音がオルタレーションされても構わない訳です。
こうした所での変格アンダルシア進行が更に順次上行進行を採って別の形へと派生し発展したのがスパニッシュ・モードであります。無論、スパニッシュ・モードまで視野を拡大すれば、そこで「フリジアン・ドミナント」の様に増二度を含んだ順次和音進行が現れる事があります。唯、それは最早当初のアンダルシア進行とは別の発展形と見るべきであります。
つまり、本曲の終止部はアンダルシア進行の変形となるスパニッシュ進行の原形を採り乍ら、終止和音でスルリとモーダル・インターチェンジをやってのけているという洒落た進行であるという物なのです。
取り敢えず余談ではありますが、本記事で《順次和音進行》と注意を喚起する様にしている理由は、所謂《機能和声での機能循環》とは異なるからなのであります。その機能循環について少し詳しく述べておく事にしましょう。
機能循環、つまりはトニック、サブドミナント、ドミナントを循環するという和音進行の構造とは、
《先行和音の根音を後続和音の上音へ取り込む》
という事をやってのけております。次の譜例を見れば自ずとお判りになろうかと思います。
斯様な、先行和音の根音を後続和音の上音への取り込みというのは順次和音進行では得られない訳です。特に和音が《トライアド》という状況である事が和音の機能を維持する上でも重要なので、四和音以上の和音を使って後続和音への上音へ取り込ませるという状況でアンダルシア進行での順次和音進行を機能和声的に押し並べて考えるのはナンセンスな事であり、順次和音進行の型(アンダルシア進行でなくとも)が上行/下行を問わずして先行和音の根音を後続和音の上音へ取り込まないのは自明な事なのであります。
またアンダルシア進行の構造──和音が順次進行しているという状況がより好ましくなる例──としては、旋律の側は和音と違って跳躍進行の方が断然楽曲の乙張りが付くのでありまして、旋律が跳躍に富み且つ全音階を示唆する状況で和音が順次進行して行くというのがアンダルシア進行がより良くなる状況であるでしょう。
尚、《跳躍進行》とは音程が「三度以上(三度も含)」の音程の事を指すもので、これは楽典ではかなり早期の段階で教えるものの、ジャズ/ポピュラー音楽だけの皮相的な知識だけで済ませている人は、理解しているようで理解していないという陥穽に陥りやすい部分ですので注意を払っていただきたい所であります。
アンダルシア進行というのは基本的にトニック・マイナーを見るべきで、それに対して四度先を見る、という事である訳ですが、本曲の場合「ド」が付くほどピーカンで能天気っぽさすら感ずるハ長調であります。
所が、上手い具合に「Em」を忍ばせて来る箇所がある訳ですね。トニック・メジャー「C」の後に「Ⅵm」である「Am」に進んだ後ですね。これが実は平行短調の脈であると。つまり「Ⅵ度」であると同時に平行短調の「i」になってしまった訳で、更にドミナントは導音化させずにドミナント・マイナーである「ⅴm」として「Em」を出し、そこからは「A△」へ向かって順次上行和音進行を充てるという仕組みな訳です。
勿論、過程での「F△7」「G7」が現れる所で、更に期待される終止和音は「Am」な訳です。然し乍ら茲で上手い具合に聴き手を欺いてピカルディー終止にしてしまう訳です。つまり、その時点でモーダル・インターチェンジになる、と。
尚、前述のコード「F△7」は5小節目1拍目で表されているコードですが、厳密にコード表記をすると「F△7(13)」がより正しい物となります。ローズのパートの五線を見ていただければお判りかと思いますので、瑣末事と捉えていただければ之幸いです。
扨て、私がこうまで『アンマルツヨコヨコ』のCM曲に肩入れする理由は他でもなく、私が最初に「sus2コード」に遭遇した楽曲だったからに他ありません(笑)。なにせクロスオーバー・ブームの萌芽が起きていた頃で、大概ギターを持っている奴は猫も杓子も「メジャー・セブンス」こそが《ナウい》《イマい》そういう時代だった訳です。まあ、ナウいもイマいという死語もこの時代にはまだまだ存在していない言葉であるのですが。
それこそもう、誰もがメジャー7thコードの響きに目覚め、その辺の数多あるバンドのアンサンブルは総じて《導音重複》という時代。ギターが傍にあれば誰もがメジャー7th音を弾くので凡ゆる声部で長七度音が重複している訳ですな。それこそベースまで目覚めて根音を弾く事を忘れてでも長七度音をベースで弾こうとする者まで居たとか居なかったとか(笑)。
まあ、ベースが長七度音に目覚めるには概して、E弦およびA弦の開放弦を用い乍らハイポジションで [gis] やら [dis] を弾こうとする訳ですね。そうすると大体楽曲のキーまで決まって来てしまう訳ですね。まあそうして後年には高中正義の「Blue Lagoon」やらカシオペアの「朝焼け」とかが巷間を賑わせる様になって行ったという時代。そこにYMOが現れて来るという状況で、YMOはクロスオーバーの延長で見られていたフシがあったモノでした。
そういう時であっても「sus2」コードにはなかなかお目にかかれなかったモノでした。「add9」とかはジェントル・ジャイアントの「His Last Voyage」の終止和音とかでも耳にしておりましたが、sus2ってぇのはなかなかお目にかかれませんでした。そんな時にCM曲で出会ってしまった訳ですから、私自身少々驚いた事だった訳であります。
扨て、本曲の終止部はアンダルシア進行の派生系としての「順次和音上行進行」という状況になっておりますが、スパニッシュ・モードの派生系として比しても民族的な印象は希薄であり、過程の順次進行よりも終止部のモーダル・インターチェンジの方が印象的であろうかと思います。
このハーモニーに類似するのが当時の別のCMでも流れていた日立Lo-Dの四声の男声合唱&ピアノのアイキャッチであろうかと思います。唯、あちらは順次和音進行ではなく、終始和音直前は「F△/G△」のポリコードであるという所です(属十一とも言えますがドミナント・モーションではない為ポリコード扱いにしています)。
つまり、イ短調での「♭Ⅵ△/♭Ⅶ△」であり、そうしてモーダル・インターチェンジが介在して「A△9」で終止するという所にあります。とはいえ、まあ似ているタイプであろうかと思います。
唯、何れにしても《平行短調》の世界観を巧みに利用しているというのが共通する醍醐味であろうかと思います。平行短調のドミナントは敢えて回避し乍ら「副和音(=属和音以外の和音)」を巧みに利用するという訳です。
兎にも角にも今回の採譜でもDoricoを使用した訳ですが、譜面(ふづら)がだいぶ整って来る様になっては来たものの、まだまだFinaleの様に使いこなせる様になった訳ではありません。ハープのパートでのレセヴィブレ・タイやペダルの記号は圧倒的に入力が楽ではあるものの、まだまだFinaleの様にしたい部分が多々あり、どうにかこうにか騙し騙し使っている所であります。