Finaleの終焉(続報)バージョン27対応への混迷

 Finaleが開発を終了し、Steinberg社のDoricoを推奨して来た件については方々で話題になり、毎日新聞でも取り上げた位のニュースとなり衆人の耳目を集めたのは記憶に新しい所でありますが、現Finaleユーザーがバージョン27へ更新していない場合、これまで作成して来たファイル(.musおよび.musxファイル)の再現性をMusicXMLの最新版で対処させる為に後にバージョン27英語版をダウンロード可能とすると表明したのはFinale開発元であるMakeMusicでありました。

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 ところが、2024年9月13日、日本のFinale代理店であるジェネリックジャパンから重要なお知らせという事でメールが届く訳ですが、日本のFinaleユーザーでバージョン27に更新していないユーザーへの対応はジェネレックジャパンで行わないと暗に示唆する内容(明言はしていないがそのサポートはFinale英語版の対応に限る事と読み取れる)。

 ジェネレックジャパンからすれば、MakeMusicから突如開発および販売終了とする様に命じられている訳で、26以前ユーザーからは今回のDoricoクロスグレードに匹敵する程の更新料(1万7000円だったか!?)が必要だったであろうと記憶するのでありますが、もしも今回Doricoクロスグレードを選択するFinaleユーザーの内、27へバージョンアップしていないユーザーが例え英語版であろうともFinale27をダウンロード可能とするのはジェネレックジャパンとしても有償アップデートした顧客に申し訳が立たないという判断に至っているのであろうと思われるのであります。

 本来責任を持って対処すべきはMakeMusicである訳で、MakeMusicは責任を持って世界にある各言語版のFinaleバージョン27をダウンロード可能とするサーバースペースを用意してダウンロード可能な様にするのであるのならば兎も角、各言語対応には各国代理店の個別の補償が伴うのであろう、それを回避してバージョン27英語版という限定的な措置でMusicXMLへの対応でお茶を濁しているというのが実際であろうと思われるのです。

 有償アップデートユーザーに限らずFinale27英語版を各国代理店で頒布できる様に行う措置を執るというのであるならまだしも、少なくとも日本の代理店であるジェネレックジャパンからすれば、27以前のユーザーは急いで27へのバージョンアップをするという選択肢も絶たれ(なにしろ即日販売終了である)、未バージョンアップのユーザーとバージョンアップ済ユーザーとの差異が無ければ代理店としてもサポートしきれないでありましょう。

 斯様な各国の言語版にまつわる特殊なサポート状況を全く見越していないMakeMusicの対応が混乱を大きくしていると思われる訳ですが、ジェネレックジャパンがヤマハに訊ねた所、フィナーレ27英語版のダウンロードをヤマハは行わない(そりゃあ当然だろう)という風に確認しているとの事。

 つまりヤマハは、FinaleからDoricoへのスイッチをアナウンスし、日本語サイトで購入する様に促していたにも拘らず、未バージョンアップのFinaleユーザーが27英語版をダウンロードできるのは、MakeMusicのサイトからeStoreへのリンクで購入したユーザーのみが得られる物であり、この場合Doricoを日本語サイトで購入する事ができないという、なんともまあ酷い有様になっているという訳です。

 私自身は既にこうした問題は回避できる立場である訳ですが、ヤマハとMakeMusicのアナウンスを信じて、ヤマハ日本語サイトでDoricoへスイッチしたFinale27へ未アップデートの方は、まんまと騙された言っても過言ではないでしょう。正直なところ、消費者庁へクレーム報告すべき案件であろうとも思います。

 いずれにせよ、MakeMusicの丸投げ対応が事の顛末の様に思われるので、Doricoを売るヤマハ(およびSteinberg)がMakeMusicの尻拭いをする必要など本来は無い訳で、ヤマハがFinale27英語版のダウンロードをするというのも変な話ではありましょう。

 とはいえ、ヤマハとMakeMusicの両者が隅々まで配慮に及んでいれば、凡ゆるユーザーは安心して移行する事ができたでありましょうが、恐らくパワーバランスとしてはMakeMusicが相当下の扱いでヤマハは大きく出ている為、《Finaleのサポートまでウチがやれるワケがないだろう》という姿勢であるのは至極真っ当な対応であろうと思われる訳です。

 ジェネレックジャパン側からすれば、27へのアップデートを済ませていない人の駆け込み需要も見込める筈であるのに、販売そのものをMakeMusicから禁止され、未アップデートはヤマハの拙いアナウンスでDoricoへのスイッチを早々としてしまった顧客は実に好い迷惑を蒙っている事でありましょう。恐らく救済措置はあろうかと思われますが、消費者庁や国民生活センターに苦情を入れる位の事はおすすめします。少額訴訟を起こしても勝ち取る事が可能でしょう。ヤマハの今回のそれは、それくらい酷い対応です。